2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第17話で、いよいよ福原遥さんが登場しますね。
福原遥さん演じる花魁「誰袖(たがそで)」は、実在した吉原の遊女がモデルとされているのをご存じですか?
この記事では、「べらぼう」の誰袖のモデルとなった実在の花魁について、身請けやその後の生涯まで詳しくご紹介します。
誰袖の実在モデルは?吉原大文字屋の高級遊女!
NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』に登場する花魁・誰袖(たがそで)。
モデルとなったのは、江戸時代後期に吉原で名を馳せた高級遊女です。誰袖は「大文字屋(だいもんじや)」という格式ある店に所属し、当時の吉原で最上位に位置づけられていた遊女でした。
吉原細見に名を残した「たがそで」
当時の吉原では、「吉原細見(よしわらさいけん)」と呼ばれるガイドブックが刊行されており、そこには店ごとに遊女の名前や格が記載されていました。
こちら↓↓は、1783年(天明三年)に発行された『吉原細見五葉枩』には、「大もんしや市兵衛(大文字屋)」の欄に「たがそで」という名が記されていますね。
出典:『吉原細見五葉枩』,蔦屋重三郎,天明3 [1783].
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2537563
最上位ランク「呼び出し」という特別な存在
吉原の遊女たちは、厳格なランク制度の中で活動していました。その中でも最も格式の高い「呼び出し」は、特別なお客だけが呼ぶことを許された花魁です。
誰袖は、その「呼び出し」として記載されており、名実ともにトップクラスの遊女だったことがわかります。美貌と教養を兼ね備え、多くの客を惹きつけた彼女は、まさに当時の吉原を象徴する存在のひとりでした。
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誰袖は狂歌も詠んだ知性派遊女
美貌と格式を兼ね備えた花魁として知られる誰袖(たがそで)は、ただの華やかな存在ではありませんでした。彼女のもうひとつの顔――それは、文学の素養を持つ知性派の遊女という側面です。
江戸時代の吉原では、教養や芸事もまた、遊女の魅力として重要視されていました。中でも花魁のような高位の遊女は、詩歌や書の心得がなければ一流とはみなされなかったのです。誰袖は、その要求に応えるだけの才能を備えていました。
『万載狂歌集』に残された一首
彼女の文学的資質がうかがえるのが、天明3年(1783年)に刊行された『万載狂歌集』です。この書物は、当時人気を博した狂歌を集めたもので、庶民から文化人に至るまで広く読まれていました。
誰袖はこの歌集の「恋の部」に登場し、以下の一首を残しています。
忘れんと かねて祈りし 紙入れの などさらさらに 人の恋しき
「忘れよう」と祈るようにして見ないようにしていた紙入れ
――かつての恋人との思い出が詰まったその品を見た瞬間に、逆に恋しさが募ってしまう。
誰袖の繊細な感情の揺れが、五・七・五・七・七のリズムに込められています。
この歌は、風刺や滑稽さを含むことの多い狂歌の中にあって、しっとりとした余情を残す一首として、異彩を放っています。
吉原の教養文化を体現した花魁
当時の吉原では、遊女が文化人としても活躍する風土がありました。絵師や文人との交流も盛んで、遊女たちは単なる接待役ではなく、芸術や文学を通じて自らの価値を高めていたのです。
誰袖もまた、その一人でした。狂歌を詠み、書を学び、客とのやり取りの中で知性と感性を磨いていた彼女は、まさに教養文化の中で生きた花魁だったといえるでしょう。
現代に残るこの一首が、誰袖の知的な魅力を静かに物語っていますね。
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誰袖の身請けと運命
華やかな吉原で名を馳せた花魁・誰袖(たがそで)。その美貌と知性は評判となり、ついには一人の武士の心をとらえます。しかし、彼女が選んだ「身請け」という道の先には、思いもよらぬ結末が待っていました。
土山宗次郎に1200両で身請けされる
1784年(天明4年)、誰袖は旗本の土山宗次郎(つちやまそうじろう)により、1200両という巨額で身請けされました。これは現在の価値に換算すれば、数千万円から1億円を超えるとも言われる金額です。彼女がいかに特別な存在であったかがうかがえます。
土山宗次郎は、当時の権力者・田沼意次の側近であり、幕府の財政を担う勘定所に所属する実力者でした。そんな男が、名高い花魁・誰袖に心を奪われたことは、不思議ではなかったのかもしれません。
↑べらぼうで土山宗次郎を演じるのは栁俊太郎さん
身請けとは、遊女が特定の人物のもとに引き取られ、吉原を離れることを意味します。華やかな舞台から一転、ひとりの女性としての人生を歩むための選択でもありました。
権勢から転落へ──斬首という結末
しかし、土山宗次郎の栄光は長くは続きませんでした。1786年、後ろ盾である田沼意次が失脚すると、彼もまた幕府内での立場を追われます。そして翌年、勘定所での不正が発覚。土山は500両の横領の罪を問われ、捕縛されました。
一度は逃亡を図ったものの、最終的には捕らえられ、1787年(天明7年)に斬首刑に処されます。元勘定方の失脚と処刑というニュースは、江戸の町でも大きな話題となりました。
誰袖のその後は?
土山の処刑後、誰袖の名は歴史の表舞台から姿を消します。吉原に戻ったという記録もなければ、再び身を立てた形跡もありません。名のある花魁であったにもかかわらず、その後の消息がまったく記されていないのです。
彼女が辿った運命は、吉原という虚構の世界に生きた女性たちの、はかなくも過酷な現実を映し出しています。誰袖の人生は、身請けという希望に彩られながらも、幕府の政争に翻弄された悲劇の物語として、静かに語り継がれています。
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福原遥演じる「誰袖」に注目!
2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』で、「誰袖」という花魁を演じるのは、女優・福原遥さん。吉原の美しさと儚さを体現するこの役どころに、今、注目が集まっています。
子役から実力派女優へと成長した福原遥
福原遥さんは、かつて『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』の「まいんちゃん」として子どもたちに親しまれ、一躍人気者となりました。可憐な笑顔と透明感ある存在感は、当時から多くの支持を集めていました。
その後も女優業を続け、青春ドラマから社会派作品まで、幅広いジャンルで着実にキャリアを積み上げてきました。2022年のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』では、ヒロイン・岩倉舞を演じ、国民的な知名度を得ることになります。
このように、福原さんは“子ども向け番組のアイドル”から“朝ドラヒロイン”、そして“本格時代劇の花魁役”へと、大きく飛躍を遂げてきた女優です。
初の本格時代劇で挑む、花魁という難役
『べらぼう』での誰袖役は、福原遥さんにとって初の本格的な時代劇出演となります。言葉づかいや所作、美しさと気高さ、そして芯の強さまでが求められる花魁役は、簡単な挑戦ではありません。
しかし、これまで一歩ずつ演技の幅を広げてきた彼女にとって、この役は大きな転機になるはずです。実在した遊女をモデルにした人物だからこそ、史実の重みと人間らしさ、その両方をどう演じ分けるのか――女優・福原遥の真価が問われる場面でもあります。

以上、今回はNHK大河ドラマ『べらぼう』に登場する花魁・誰袖の実在モデルやその生涯についてご紹介しました。
華やかな吉原で生きた実在の誰袖は、美しさだけでなく、教養や感性も備えた特別な存在でした。
身請けという大きな転機、そしてその後の数奇な運命は、まさにドラマの世界と重なります。
福原遥さんが演じる「誰袖」が、どのようにその人生を映し出していくのか――
『べらぼう』の今後の展開とともに、目が離せません。
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