2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の第30話。今回は、松平定信が政の表舞台に足を踏み入れる一方で、歌麿が己の絵と向き合い始める重要な回となりそうです。
この記事では、「べらぼう」第30話のあらすじをご紹介します。ネタバレを含む点にご注意ください。
べらぼう｜第30話のネタバレとあらすじ
定信、公儀の政へ踏み出す
白河松平家の松平定信は、一橋治済から届いた文に驚きました。
「政に関わってみないか」という誘いだったのです。定信は江戸の一橋邸を訪れましたが、自身の家格が低いこと、さらに養母・宝蓮院の体調がすぐれないことを理由に、丁重に断りました。
定信の生家・田安徳川家には跡継ぎがいません。
もし宝蓮院が亡くなれば、家そのものが取り潰されてしまう可能性がありました。すると治済は、次の将軍となる自分の子・徳川家斉の代になれば、必ず田安家を復活させると約束します。その言葉を聞いた定信は決意を固め、公儀の政に身を投じることを選びました。
一方、宝蓮院は密かに動いていました。田安家の存続をあきらめ、代わりに白河松平家の家格を上げてもらえないかと、大奥総取締の高岳を通じて田沼意次に願い出たのです。田沼はこの願いを認め、家格は引き上げられることになりました。
こうして定信は、幕府の中枢へと歩み出し、政に深く関わる立場となっていきます。
重三郎の次なる仕掛けは“狂歌絵本”
吉原の復興から勢いを増していた重三郎の店は、黄表紙の流行で大いににぎわっていました。しかし重三郎はそこで立ち止まることなく、次なる手として“入銀狂歌絵本”という新たな企画を打ち出します。
「入銀一分で、狂歌を絵本に載せられる」というこの仕組みは、読者の参加を促す斬新なものでした。
絵は北尾重政に依頼する予定でしたが、重政は「最近話題になっている人まね歌麿に描かせてみたらどうか」と勧めました。
そこで重三郎は、歌麿にも絵を描かせてみることにしました。天明六年の初め、二冊の狂歌絵本が完成します。一冊は重政が、もう一冊は歌麿が担当し、どちらも見分けがつかないほどの完成度でした。
しかし、歌麿の胸の内には葛藤がありました。自分の絵を描こうとすればするほど、亡き母や、かつて母と一緒に暮らしていた情夫・ヤスの記憶がよみがえり、心がかき乱されるのです。
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封じられた記憶と描けない絵
ある日、歌麿は荷物を抱えて部屋を出ていきました。重三郎は心配になり、こっそりあとをつけていきます。たどり着いたのは、人けのない寂れた神社でした。
荷物をほどいた歌麿は、何かを捨てようとしていました。そのとき、社殿の奥から無骨な男が現れ、さらに女の姿も見えます。女の顔を見た歌麿は、母の幻影を重ねてしまい、錯乱して男に襲いかかりました。
その場に散らばった紙には、描きかけた絵がすべて黒く塗りつぶされていました。苦しみを閉じ込めたようなそれらの絵に、重三郎は息をのみます。
やがて誤解が解け、男も女もその場を立ち去りました。残された歌麿は、心の奥にある傷を重三郎に打ち明けます。
「自分の絵なんて、いらないんじゃないか」とつぶやく歌麿に対し、重三郎は「名のある絵師にならなくても、お前はお前でいい」と、あたたかい言葉をかけました。
そのとき、重三郎の店を一人の老人が訪ねてきます。幼い歌麿に絵を教えた絵師・鳥山石燕でした。妖怪画で知られる石燕は、歌麿を「三つ目」と呼びます。それは、ふつうの人には見えないものが見える特別な目を持つ者という意味でした。
三つ目の目に映る世界
重三郎は石燕に、歌麿が黒く塗りつぶしてしまった絵を見せました。石燕はそれをじっと見つめ、言います。「妖が塗り込められておる。見える者が描かねば、そいつらは消えてしまうのじゃ」と。
その言葉に、歌麿の心が動きました。何のために絵を描くのか、自分の目にしか映らないものを、どう表現すればよいのか。その答えに近づいたような気がしました。
歌麿は思い切って、石燕に頭を下げます。「弟子にしてください。自分の絵を描きたいんです」と。
こうして歌麿は重三郎のもとを離れ、石燕の庵で暮らす決意をしました。
その年の夏、幕府は「貸金会所命（かしきんかいしょめい）」という命令を出しました。全国の町人や百姓、寺社に対して、家の大きさや石高に応じて金を出すよう求め、それを大名に貸し付けるという仕組みです。幕府は出資者に利息をつけて金を返すと約束し、自らも利息の一部を受け取ることになっていました。
この制度は、重三郎が考えた“入銀狂歌絵本”の仕組みにヒントを得て生まれたものでした。しかし、金を取り立てて公儀に納め、それを借りるという構造に、大名たちは猛反発しました。庶民の怒りを買い、一揆が起きることを恐れたのです。
こうして、政の場でも出版の世界でも、時代は大きな転換点を迎えていました。
2025年大河ドラマ｜べらぼうのあらすじとネタバレ全話まとめ
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べらぼう第30話の見どころ解説
「べらぼう」第30回は、いよいよ松平定信が本格的に政の舞台へ乗り出すターニングポイントとなりそうです。定信といえば“寛政の改革”で知られる人物ですが、今回描かれるのはその序章。
家格という壁を前にしながらも、公儀の未来にかけて一歩踏み出す姿には、志の強さがにじみます。一橋治済との駆け引きや、田安家の存続をめぐる約束など、歴史ファンとしては思わず身を乗り出したくなる展開です。
一方で、文化の世界では重三郎がまたしても新たな挑戦を仕掛けます。狂歌絵本に“入銀”で庶民の声を載せるというアイデアは、現代でいうクラウドファンディング的な仕組み。その発想力に「さすが蔦重！」と唸る場面が続きそうです。
そして今回、最大の見どころのひとつが歌麿の心の闇。“人まね歌麿”というレッテルに苦しみ、描いては塗りつぶす日々。その痛みと葛藤が、絵師としての原点へと彼を導いていきます。鳥山石燕との再会も熱い！ 絵に込められた「見えぬものを描く覚悟」に胸を打たれそうです。
政治と文化、二つの軸が交差しながら、それぞれの“変わりどき”が訪れる。そんな節目の一話として、期待が高まります。
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