2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の第29話。今回は、黄表紙の誕生をめぐる戯作者たちのやりとりや、重三郎が“笑い”を通じて人の心に向き合う姿が描かれる予定です。
この記事では、「べらぼう」第29話のあらすじをお届けします。ネタバレを含みますのでご注意ください。
べらぼう｜第29話のネタバレとあらすじ
蝦夷から戻った男と、動き出す田沼の策
江戸の町に、ひとりの男が倒れていました。倒れていたのは、なんと平秩東作。命からがら蝦夷地の松前家から戻ってきたのです。彼が持ち帰ったのは、松前家の裏帳簿。そこには、幕府に黙って私腹を肥やしていた証が残されていました。これを利用すれば、幕府は松前藩の領地を没収できるのです。
この帳簿、実は田沼意知が命と引き換えに手に入れようと動いていたものでした。東作の持ち帰った帳簿を受け取った田沼意次は、その遺志を継ぎ、家臣の土山宗次郎に命じます。
「今すぐ上知願いの書状をしたためよ。ここが勝負どころだ」
一気に松前家を攻め落とす構えを見せる意次。その背後には、亡き息子への複雑な想いがにじんでいました。
重三郎が狙う、大ヒット黄表紙の誕生
一方、重三郎の店では、戯作者たちが集まり新たな企画会議が始まっていました。手拭いに描かれたひとりの男の顔。それを見た重三郎は言います。
「この顔を主人公に、腹を抱えて笑える黄表紙を作りたいんだ」
北尾政演や恋川春町らが案を出し合うなか、鶴屋喜右衛門が提案します。「これは二代目金々先生にぴったりだ」と。春町が以前描いた青本の主人公・金々先生の続編というわけです。
しかし政演は気が進みません。それでも重三郎に押されて、しぶしぶ執筆を始めました。
ひと月後、完成した原稿を囲み、春町、明誠堂喜三三、大田南畝、そして小田新之助やていまで参加して試し読みが行われました。
それぞれの感想はまちまち。春町は高評価、南畝は「まずまず」と言い、ていは「世間知らずの若者が騙される話は笑えない」と指摘。新之助も「いま江戸に来る田舎者は、夢追い人じゃなく飢えた流民だ」と現実を突きつけます。
意見を聞いた重三郎は、「いっそ一からやり直さないか」と政演に提案。ところが政演はそれを拒み、席を立ってしまいました。
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「気の毒」から「笑い」への転換
重三郎は店先で、再び手拭いを見つめながら考え込みます。そこへ鶴屋が通りかかり、「これ、佐野様に似てませんか？」と一言。斬首された田沼意知の仇・佐野政言のことでした。
生前の政言は真面目で苦労の多い人だったと語る鶴屋。その姿を笑いに変えるのは気が引ける。重三郎の中で何かがはじけます。
「じゃあ、気の毒じゃなきゃ笑えるってことか？」
それなら、佐野政言のような人物像を真逆にしてやればいい。甘やかされて育った金持ちの若旦那。そんな主人公が、江戸で浮き名を流そうと大騒ぎする話なら、誰にも気兼ねなく笑えるに違いない。
政演たちと再び集まり、意見を出し合います。金で女を雇って「モテてるふり」をしたり、噂を流してもらったり……。誰もが「バカバカしいけど、笑える！」と盛り上がり、ついに政演も「書きたい！」と宣言。重三郎も全力で取材を手伝い、政演は自らの恋愛経験も織り交ぜながら、作品を仕上げていきます。
こうして誕生したのが、新作黄表紙『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』でした。
仇討ちではなく、笑いを届けるという答え
新年、完成した本を手に、重三郎は土山邸を訪れます。目当ては、意知を失ったあと、心を閉ざしていた誰袖。かつての花魁は、今や抜け殻のような日々を送っていました。
重三郎は言います。「待たせたな。これが俺の“仇討ち”だ」
そうして、「艶二郎」という名の主人公の物語を、そっと読み聞かせ始めました。艶二郎は、浮名という遊女に恋し、なんとかして「噂になりたい」と奔走する人物。浮名の間夫になろうとし、挙句の果てには駆け落ちの真似事までやってのける。どこまでも見栄と妄想に生きる男の姿に、誰袖はついに笑い声をもらします。
その笑顔に、重三郎は涙ぐみました。政言によって奪われた笑顔を取り戻す。それが重三郎にとっての本当の仇討ちだったのです。
「きっと、これじゃ気が済まないとは思う。でもな、人を呪うのは、もうやめにしようぜ」
誰袖は、意知の後を追おうとしても死にきれず、「呪って呪われて終われば一石二鳥」とすら思っていたと語ります。
「許してくだりんすかねぇ、あの方は……」
そうつぶやいた瞬間、季節外れの桜の花びらが舞い落ちました。庭の一角だけ、狂い咲きしていた桜。それはまるで、空から届いた「もう許していいよ」という意知からの返事のように見えました。
その年、1785年の初春。『江戸生艶気樺焼』は爆発的に売れ、江戸の町に久々の大笑いを届ける一冊となったのです。
2025年大河ドラマ｜べらぼうのあらすじとネタバレ全話まとめ
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べらぼう第29話の見どころ解説
「べらぼう」第29回は、黄表紙『江戸生艶気樺焼』の誕生秘話がメインとなる、文化と人情が交差する一編になりそうです。
幕府による蝦夷地上知の裏で、重三郎は“笑い”という武器で、亡き意知の恋人・誰袖の心に光を届けようとします。この対比がじつに見どころです。
重三郎が仕掛ける「仇討ち」が、刀ではなく言葉と笑いで成されていくところが、とても印象的。
涙と笑いが入り混じる物語に、「復讐」の別の形を見せてくれそうです。しかも、笑いの中に哀しみを溶かし込むという、江戸文化らしい風味がたまりません。
また、戯作者たちが「笑えるキャラクター像とは？」と議論を重ねる場面は、まるで現代の編集会議のようで、物づくりの面白さが詰まっていますね。
佐野政言をモデルにするか否かの葛藤から、「気の毒じゃなきゃ笑える」という逆転の発想に至るくだりは、物語作りの醍醐味そのもの。
歴史ファンにとっては、松前家の裏帳簿を巡る田沼意次の動きも要注目。一橋治済との駆け引き、そして幕政の裏で進む情報戦も見逃せません。
文化、権力、人の情。どれを切り取っても味わい深く、第29回はまさに「べらぼう」らしい1話になりそうです。
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