2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の第32話。
今回は、老中を退いた田沼意次が、再び政の舞台で動き始める姿が描かれる予定です。幕府内で渦巻く思惑や駆け引き、そして米騒動の兆しなど、緊張感ある展開が見どころとなりそうです。
この記事では、「べらぼう」第32話のあらすじをご紹介します。ネタバレを含む内容となっていますので、ご注意ください。
⇒ これまでの「べらぼう」あらすじとネタバレ最終回まで全話まとめ
べらぼう|第32話のネタバレとあらすじ
長屋の叫びと重三郎の葛藤
実りの秋だというのに、江戸の町では相変わらず米不足が続いていました。
重三郎が新之助の住む長屋を訪れると、住人たちの怒声が飛び交っていました。お救い米の配布条件が厳しく、ほとんどの人が対象外だというのです。
新之助は冷静に説明します。
「一人の働き手で多くを養っていて、その働き手が病気になった場合に限る」
とのお触れが出たらしく、皆その条件に当てはまらないため、米がもらえないとのことでした。
重三郎は筆耕代と米を差し出しますが、新之助は米を固辞。
「おふくととよ坊が亡くなったのは、自分が米を受け取ったからだ」
と告げます。
それは、かつて重三郎が渡した米でした。新之助は責めているのではないとしつつも、己の選択と向き合う覚悟を語ります。
田沼追放と幕府の渦
ある日、蔦屋に朋誠堂喜三二と恋川春町という人気作家コンビがやってきました。
二人は長屋の暮らしがどれほど厳しいかを聞き、「それどころじゃない」と口を揃えます。というのも、いま幕府では大きな動きが起きていたのです。
かつて絶大な権力を持っていた田沼意次が、ついに御三家から追及を受けることに。
尾張の徳川宗睦、水戸の徳川治保、紀伊の徳川治貞の三名が連名で意見書を提出し、「田沼の代わりに松平定信を老中にすべきだ」と主張します。これにより、田沼失脚の流れが本格化していきます。
その頃、幕臣の大田南畝が蔦屋に駆け込んできて大騒ぎ。
自分の狂歌集がすでに出版されていたことを知り、「こんなときに出せば田沼派と思われてしまう」と青ざめます。田沼に庇護されていた南畝は、粛清の対象にならないかと心配でたまらない様子です。重三郎たちがなだめる中、南畝の動揺ぶりが逆に不安をあおります。
一方、将軍の父であり実力者の一橋治済も、事態の収拾を図ろうと動きます。御三家の意見書にどう対処するか、側近の高岳らと密談を重ねますが、御三家の圧力は強く、簡単には押し返せません。
さらにややこしいのは、定信が「将軍家の親族」であるため、そもそも老中に就けないという“お定まり”があること。それを盾に大奥も横やりを入れてきます。
そんななか田沼意次は裏から手を回し、今度は定信を家斉(次期将軍)の「後見役」として立てる案を持ち出します。
老中ではなく後見という形なら、政に関与できる。こうして意次は、表の権力から退いたように見せかけながらも、裏で新たな政治の布石を打とうとしていたのです。
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市中の騒乱と重三郎の思い
一方、江戸市中では米の値が跳ね上がり、奉行所には怒れる群衆が押し寄せていました。
そこには新之助や長七の姿も。そんな中、大坂で打ちこわしが始まったという報せが入り、事態はさらに緊迫。
定信に対し、意次は奥州からの米回送を懇願しますが、定信は「見返りは不要」と断言。
米を出すことが徳川の威信を保つ手段であり、自分の出世と引き換えにするつもりはないときっぱり言い放ちました。
重三郎は読売を使ってお上の策を伝え、混乱を沈めようとしますが、本屋仲間からは「お上の広報などやっていられない」と冷たい反応。
それでも重三郎は諦めず、打ちこわしの準備を進める新之助のもとを再び訪れます。
「この布に、思いの丈をぶつけてほしい」
と白い木綿を差し出し、「暴れるより、何に怒っているかをしっかり伝えましょう」と訴える重三郎。
そして「俺のわがままを一つ、誰も捕まらず死なないこと。それだけが望みです」と頭を下げました。
その真摯な姿に新之助は心を動かされ、重三郎の布に筆を取ります。
打ちこわしの夜へ──声を届けるために
蔦屋に戻ると、田沼家の用人・三浦庄司が現れ、黄表紙をすべて買い取ってくれていたとていが伝えます。
話の流れで「田沼様がまた城に戻られた」と聞き、政に関われる立場ではないものの、老中が通る雁間詰に登城し、進言を続けていることを知ります。
重三郎はその奮闘を伝える黄表紙を作るよう三浦に頼まれます。
危険な賭けでしたが、田沼の努力を知る者として、重三郎は心を動かされます。
そんな中、蔦屋の前にいた物乞いが、重三郎の行動を見つめていました。
一方、長屋では打ちこわしの準備が着々と進み、大八車に道具が積まれていきます。
そこへ重三郎が現れ、「喧嘩にすれば、大きな罪にはならない」と新之助に語りかけます。
「米を盗まなければ、命を奪わなければ、それは正当な訴えとなる」
重三郎はその場の空気を変えるような勢いで言葉を重ね、「皆で打ちこわしのあと、笑って飯を食おう」と訴えます。
新之助はその言葉を受け、「喧嘩なら、江戸の華で済む」と応じ、布に筆を走らせました。
こうして、人々の怒りは暴力ではなく、言葉によって届けられることとなったのです。
2025年大河ドラマ|べらぼうのあらすじとネタバレ全話まとめ
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べらぼう第32話の見どころ解説
将軍の座を巡る政争と、米不足にあえぐ庶民の怒り。その両方が激しくぶつかり合う回となったべらぼう第32話は、まさに「べらぼう」というタイトルにふさわしい濃密な一話です。見どころを二つの軸からじっくり解説していきます。
田沼 vs 御三家 vs 定信の頭脳戦
第32話の前半で注目したいのは、田沼意次を中心に繰り広げられる幕府の政争劇。
御三家(三つの徳川親藩)が意次に対し「罰が軽すぎる!」と詰め寄り、新たな老中候補として松平定信の名前を挙げます。
定信は吉宗の孫で家斉(次の将軍)の叔父にあたる人物。つまり超エリート。御三家としては、「田沼のような成り上がりより、血筋の確かな人物を」と押し出した形です。
これに対して田沼もただでは転びません。なんと、自らかつての政敵・定信に頭を下げ、「将軍の後見人になってほしい」と提案するのです。
これは田沼流の“囲い込み戦術”。
老中就任は阻止したうえで、「後見役」という名ばかりの立場を与え、政の主導権は自分たちが握ったままにしようという策略でした。
しかし、定信はそこまで甘くない。定信は、田沼の下心を見抜いてあえて距離を置きます。
この緊張感あふれる駆け引きがどう描かれるのか楽しみです。
新之助の義
一方、物語のもう一つの大きな軸は、新之助と重三郎が向き合う“庶民の現実”。
江戸の町では米の高騰が止まらず、長屋の住人たちは飢えに苦しみ、怒りの声があちこちで上がっています。まさに打ちこわし寸前。
そんな中で重三郎は、「暴れる前に、何に怒ってるのか“伝える”べきだ」と訴え、真っ白な布を新之助に手渡します。
そして新之助は、己の怒りと悲しみを筆に託す道を選びます。
新之助の“義”とは?
ただ「正義感をふりかざす」ことではありません。
「おふくととよ坊は、この世の仕組みに殺された」と語るその想いは、怒りを抱えながらも他者を責めきれない、苦しみと優しさが同居した“覚悟”のようなもの。
「喧嘩としての打ちこわし」──暴力ではなく、訴えとしての行動に変えようとする決意。それを言葉で伝えようとするのが、新之助の“義”なのではないでしょうか。
そしてそれを支える重三郎の「誰も捕まらず、死なずに終わってほしい」という願いもまた、彼なりの“義”だと感じさせられます。
新之助と重三郎の行動が、幕府の無関心に対する“静かな反撃”となるのか──。
放送が楽しみですね。
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