NHK朝ドラ『あんぱん』でライターとして活躍するのぶの妹・蘭子。
しっかり者で、家族を支える姿が印象的なキャラクターですが、実在のモデルは誰なのでしょうか。
今回は、ヒロインのモデル・やなせたかしさんの妻、暢(のぶ)さんの妹・瑛(えい)さんに焦点を当て、結婚や仕事、その後の人生を史実からたどっていきます。
あんぱん蘭子の実在モデルは暢さんの妹・瑛さん
NHK朝ドラ『あんぱん』に登場する蘭子(河合優実さん)は、実在モデルは、やなせたかしさんの妻・小松暢さんの妹である池田瑛さん(1920〜2003年)と考えられます。
小松暢さんは、総合商社「鈴木商店」に勤めていた池田鴻志さんと登女さんの長女として生まれ、兄1人と妹3人を含むきょうだいに囲まれて育ちました。
そのうち次女にあたるのが池田瑛さんです。
池田瑛さんは高知県で誕生し、大阪の阿倍野高等女学校を卒業。その後は故郷に戻り、事務員として勤務していました。
数字に強く、几帳面な性格だったといわれています。
朝ドラで描かれる蘭子は基本的にはドラマオリジナルの設定が多いと思われますが、「しっかり者」というイメージは、まさに池田瑛さんの人物像に通じる部分が多いのではないでしょうか。
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蘭子のモデル・瑛さんの結婚
蘭子の実在モデルとされる池田瑛さんの人生は、結婚によって大きく動き出しました。
相手の曽我部鹿一さんは名家の出身ながら、自分の生き方を貫こうとした人物で、二人の結婚は周囲の反対を押し切って実現したものでした。
その後は旧満州に渡り、大きな農場を経営するなど、新たな舞台で生活を築いていきます。
反対を押し切った結婚の決意
池田瑛さんの結婚相手となった曽我部鹿一さんは、今治市の豪農の次男で東京帝国大学を卒業した才知ある人物。
しかし、親からは資産家の娘との縁談を求められ、「言いなりになりたくない」と反発していました。
池田瑛さんもまた意志が強く、周囲の反対を押し切って鹿一さんとの結婚を選びました。
この決断には、控えめながらも芯の強さを持つ池田瑛さんの性格が表れていたといえます。
満州での生活と戦争の影
結婚後、二人は曽我部家の親戚を頼って旧満州へ渡りました。
現地では農場を経営し、従業員300人を抱えるまでに発展させ、二人の間には2人の息子と1人の娘が生まれました。
しかし、戦争が進むにつれて状況は厳しくなり、夫の曽我部鹿一さんは兵役に召集され、戦死という悲しい運命をたどります。
さらにソ連軍の侵攻を受け、池田瑛さんは顔に墨を塗り、3人の子どもを守りながら命がけで引き揚げ船に乗り、今治へと帰還しました。
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あんぱん蘭子のモデル・瑛さんの仕事は?
戦後、夫を亡くした池田瑛さんは苦しい生活のなかで子育てを続けていました。
やがて姉の暢さんからの呼びかけで上京し、やなせたかしさんの仕事を支える大切な役割を担うことになります。
それが「やなせスタジオの金庫番」でした。
姉の信頼を一身に受けて上京
1960年代、瑛さんは高校を卒業した娘の川上玲子さんとともに東京へ向かいました。
すでにやなせたかしさんの仕事は多忙を極めており、家計管理を担う存在が必要になっていたのです。
到着したその日、暢さんは通帳と金庫の鍵を池田瑛さんに手渡し、「あなたを信用している」と言い切りました。
大金を前に戸惑う瑛さんに対し、姉からの揺るぎない信頼の言葉があったからこそ、その役目を引き受けることになりました。
金庫番という仕事
池田瑛さんは几帳面な性格を生かし、やなせスタジオの資金管理を着実に行いました。
その姿勢は後にスタジオ社長となる越尾正子さんへと受け継がれていきます。越尾正子さんもまた暢さんから通帳と金庫の鍵を託され、「見る目がなかったと思って諦める」と言われたと振り返っています。
暢さんの思い切りのよさと、瑛さんの誠実さが重なり合うことで、スタジオの基盤はしっかりと守られていきました。
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瑛さんの晩年とその後
やなせスタジオで大切な役割を果たしてきた瑛さんですが、姉の暢さんの死をきっかけに、自身の体調も少しずつ崩れていきます。
晩年は病との闘いを経て、静かな最期を迎えることになりました。
姉との別れと仕事からの引退
1993年、暢さんががんのため75歳で亡くなります。
最も身近な存在を失った時期と重なるように、瑛さんも体調を崩しはじめました。
これを機に、やなせスタジオで担ってきた金庫番の仕事を越尾正子さんへと引き継ぎ、長年務めてきた役目から退くことになります。
愛する夫と眠る最期の地
池田瑛さんはその後も家族とともに過ごしましたが、2003年にがんのため83歳で亡くなりました。
眠っているのは、夫・曽我部鹿一さんが祀られる愛媛県今治市の軍人墓地です。
反対を押し切って結婚し、満州へ渡り、戦争を乗り越えた夫婦は、今は同じ地で安らかに寄り添っています。
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あんぱん「蘭子のモデルは向田邦子」説も!
朝ドラ『あんぱん』で登場する蘭子のモデルは、やなせ暢さんの妹・池田瑛さんだといわれています。
ですが一部では「実はもうひとりモデルがいるのでは?」という声も。それが、昭和を代表する脚本家・向田邦子さんなのです。
今日の『あんぱん』で蘭子さんは映画評を書く仕事をしていた。もしかして蘭子さんは向田邦子さんになるのかな?そういえばツンとすましてる顔も似てる#あんぱん pic.twitter.com/qM388iL0zk
— stanleyk2001 (@stanleyk2001) August 13, 2025
やなせたかしさんと向田邦子さんの交流
若き日のやなせたかしさんは、映画雑誌『映画ストーリー』の仕事を通じて向田邦子さんと出会いました。
大きな瞳にベレー帽姿で原稿を取りに来て、「面白いから毎号楽しみにしてます」と声をかけてくる──そんなやりとりから仲が深まり、一緒に展覧会を巡ることもあったそうです。
やなせたかしさんが関わったドラマに向田邦子さんを推薦して、シナリオを書いてもらったことまであったのだから、縁の深さがうかがえますね。
蘭子の物語と向田邦子さんの重なり
ドラマの蘭子は、映画雑誌に投稿しながら物書きへの道を歩んでいきます。
この設定、まさに向田邦子さんの経歴とリンクしています。
編集部で働き、やがて脚本家へと飛び込んでいった彼女の姿を思い出す人も多いはず。
さらに、蘭子を演じる河合優実さんの知的で芯の強い雰囲気が、向田邦子さんの印象と重なると話題になっていますね。
直木賞作家となった向田邦子さんの急逝
その後の向田邦子さんは、『父の詫び状』や『思い出トランプ』で人気を集め、直木賞まで受賞。
まさに時代を代表する作家へと駆け上がりました。
けれども、1981年に台湾での飛行機事故で突然の別れが訪れます。
51歳という若さでの急逝に、やなせたかしさんは新聞で訃報を知り、
「今度こそ本当に手のとどかないところへ行ってしまった。孤独なランナーは猛烈なラストスパートをして、人生の最後のテープを切ってゴールインした。ぼくはまだスタートラインの近くで迷ってうろうろしていたのに……。」
出典:人生なんて夢だけど
と胸の内を綴りました。
後に『アンパンマン』が誕生するのは、その8年後。
やなせたかしさんにとっても、大きな心の転機となる出来事だったのです。
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あんぱん蘭子と八木信之介はどうなる?
さて、朝ドラあんぱんでは、物語が進むにつれて、蘭子と八木信之介の関係がどう展開していくのか、気になる方も多いのではないでしょうか?
仕事仲間のように見えて、時おり見せる言葉や表情には特別な響きがあり、このまま恋愛に発展するのか、それとも別の道を選ぶのか──その行方が注目ポイントですよね。
結婚の可能性はある?
八木信之介には「かつて妻子がいた」という背景が描かれており、その過去が蘭子との関係にどう影響するのかが見どころです。
もし乗り越えることができれば、蘭子との結婚という未来も夢ではないかもしれません。
視聴者のあいだでも「まさかの夫婦に?」と期待する声が少なくないようです。
仕事を通じて深まる絆
あんぱんでは、蘭子と八木信之介は、仕事を通じて強い信頼関係を築きつつあります。
八木信之介が「君にしか書けないものを書け」と言葉を投げかけるシーンは、単なる仕事上の指導を超えて、蘭子に対する特別なまなざしを感じさせましたね。
そして、あんぱん第21週では、お互いの過去を知ることになります。今後つらい気持ちを分かち合っていくのかもしれません。
以上今回は、朝ドラ『あんぱん』に登場する蘭子のモデル・池田瑛さんについてご紹介しました。
控えめながら芯の強い性格で、結婚・戦争・引き揚げ・子育て、そしてやなせスタジオでの「金庫番」としての仕事まで、波乱に満ちた人生を送りました。
ドラマの蘭子の姿にも、そんな瑛さんの実直さが映し出されていますね。
今後の蘭子がどうなるのか、朝ドラあんぱんの展開も楽しみです。
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